※こちらは玉嶋亮連載メルマガのバックナンバーです。メルマガ登録をすると最新の記事がメールで届きます。
こんばんは!玉嶋です。
早速ですが、今週末の『ローズステークス』『セントライト記念』予想のポイント、馬券について、玉嶋の見解をお届けします。
目次
●トラックバイアス 分析の手順とポイント
【質問】玉嶋さんはよく「馬場読み」が大事と言っていますが、分析の仕方が分かりません。具体的な方法、やり方があるのでしょうか?
【回答】よくいただく質問です。無料メルマガ会員様に向けて、来年オーパーツ・パブリッシングより出版予定の新書の原稿の一部「トラックバイアス 分析の手順とポイント」を無料公開します。
① 前週の結果をベースにする。
※開幕週なら「内前有利かつ高速馬場だろう」が馬場読みのスタート地点
※変則的な条件として「コース替わり(A コース→B コース等)」になることがありますが、それを考えたところで分かりません。コース替わりは考慮せず、ないものとして前週のトラックバイアス据え置き。「激変しているかも」は頭の片隅に入れておきます。
② 雨の影響は、基本的に考慮しない。
※雨が降って雨馬場になると、紙面には「重馬場巧者」のコメントが並び、馬券購入者から注目を浴びます。その結果、過去に雨が降った時に好走した馬が過剰に人気を背負います。
※一方で、たとえ雨が降っていても、昨今の馬場管理技術が向上している状況下では、雨の影響は限定的です。雨が降って「稍重」や「稍重に近い重」であれば、良馬場と同列に扱います。分析の仕方は良馬場の時と同様に、「前が有利か?それとも外なのか?」シンプルにそれだけです。
※雨上がりの場合は、極端に内前有利になる可能性が高くなるので要注意です。2022 年マイラーズカップ(2着ホウオウアマゾン)、2022 年札幌記念(2 着パンサラッサ)他。
※2022 年七夕賞のようにドロドロの馬場になった場合は、例外中の例外です。ここまでドロドロになってしまえば、雨馬場適性の影響は無視できません。(2 着マイネルウィルトス)
③ 当週において、メインレースの前に施行される芝レースを全てチェックする。
※ここでは、下級条件にいけばいくほど内前有利の傾向が高くなるのは、頭の片隅に入れておきます。下級条件の方が道中のペースが緩くなる点、上位に食い込む馬は先行力が高い場合が多い点を勘案します(下級条件では、能力が低い馬はハナからレースに参加できない場合が多く、オープンクラスに比べると相対的に前残りが発生しやすい)。上位人気が先行してそのまま上位を独占するようなレースでは、トラックバイアスに関係なく決着した可能性が高いため、参考外です。(例えば、前週が外差し馬場だったにも関わらず、午前中の未勝利で先行した上位人気馬がワンツースリーを決めた場合は「先週の馬場から激変して、内前有利になった」と結論付けるのは早計です。そのような結果になった場合は、参考外の可能性を疑いましょう)
④ 上位入線馬とラップタイムを確認する。
③において、「上位入線馬の内、人気薄はいるか?」「全体時計とラップタイムの関係は?」「ラスト 200mのラップに着目し、垂れているかそうでないか?」を検証します。人気薄の馬が穴をあけている場合には、前残りであろうと外から差してきた場合であろうと、トラックバイアスの恩恵を受けて好走している可能性があります。また、垂れている場合は、馬場が荒れている影響でそうなっている可能性があります。下級条件で先行した馬が垂れている場合には、芝重賞のように差しが決まりやすいレースでその傾向がさらに顕著になり、外差しが決まる可能性が高くなります。
⑤ 結論(馬券を買うレースのトラックバイアス)
①②③④を総合的に判断し、結論付けたトラックバイアスを考慮して最終的な印と買い目を仕上げます。
⑥ 印の打ち替え(臨機の対応)
これは余談ですが、トラックバイアスを考慮して印を積極的に打ち替えることは悪いことではありません。ここまで愚直に検証すれば、回収率に良い影響を与えることはあっても、悪い影響を与えることはありません。
例えば、「外差し馬場」と判断したならば、人気を背負っている馬の印を下げることを検討する余地があります。日曜日の重賞であっても、土曜日早朝から馬券は意外と売れています。つまり、トラックバイアスやオッズを見ないで馬券を買っている馬券購入者が一定数いるということです。そこに優位性があります。よく「印を打ち替えるのが怖い」とご意見をいただきますが、印の打ち替えに「勇気」は要りません。それに必要なのは積み上げた「論理」です。
【補足】
12月発売予定の新書では他にもいくつか事例を挙げますが、どちらかと言うと分かりやすい簡単な例です。読者の方には、手を抜かずに毎週トラックバイアスのチェックをしてただきたいと思っています。
例えば、土曜日だけ雨が降って日曜日に止んだり、日曜日の午後から雨が降ってきたり、パターンは無限にあります。時期によっても芝の状態が「野芝」「オーバーシード」等、違いがあります。多くのケーススタディが蓄積されてくると、「今日は、これくらい」の感覚が分かってきます。トラックバイアスは「習うより、慣れろ」。とにかく場数を踏んでください。
新書では、トラックバイアスの事例で難易度は「★☆☆」~「★★★」で示します。★が少ないほどトラックバイアスの判断が簡単で、★が多くなるほど判断が難しくなりす。「★★★」の見極めは、多くのケーススタディで OJT をして経験をしないと判断が難しいです。「★☆☆」「★★☆」を精度良く見極められるようになれば、大きな読み違いは起きないはず。まずは、そこを着実にクリアしていただきたいと思います。もう少し踏み込んで言うと、「★☆☆」のパターン(例えば、開幕週の内前有利)は、ほとんどの競馬ファンが分かっているため、差別化できません。チャンスは「★★☆」「★★★」の場合。馬場読みで多くの競馬ファンを出し抜いて自分だけが優位に立てれば、馬券で利益を上げられるチャンスが拡大します。
●2022 年 東京優駿 内外フラット 難易度★★☆
前週のオークス、当日のむらさき賞のレースより、ダービーのトラックバイアスを分析した事例を以下に示します。
●2022/05/22(日) 東京 11R 優駿牝馬(オークス)【前週】
例年は内前有利の東京開催でしたが、外からスターズオンアースが大外枠から差し切って、2 着には内からレーン騎手の好騎乗によって上手く外へ持ち出したスタニングローズが 2 着。この結果から、翌週のダービーは「やや外差し有利」か?をベースにトラックバイアスの分析をしました。
●2022/05/29(日) 東京 10R むらさき賞
前週のオークスからは、外差し有利か?と考えていましたが、ダービー週はやや内寄りが有利なレースが続きました。決定打は、むらさき賞。1 着は逃げてラスト 11.7 でまとめた 6 番人気のヒルノダカール。結論は、前週で外差しだったオークスも考慮に入れて、「内外フラット」でした。余談ですが、前年ダービーよりも、やや内有利。エフフォーリアがこの年の馬場だったら、勝っていたと推察します(前年のエフフォーリアは、1 枠 1 番。外差しトラックバイアスだったため、仕掛けを遅らせれば不利な内枠から脱出できないリスクがありました。それを嫌って、直線入口で早仕掛けをして外へ持ち出すことに成功しましたが、流石に仕掛けが早すぎて、後方からシャフリヤールに差されてしまいました。レース内容としては、エフフォーリアが圧倒的に上でした。)。
●2022/05/29(日) 東京 11R 東京優駿(ダービー)
戦前に「四強」と言われていたメンバーでした。当日は内外フラット。そのトラックバイアスを踏まえ、人気を背負っていた四強は、こぞって外枠に収まっていたことを考慮して、好走する可能性が高いと考えました。内が極端に有利なトラックバイアスならば、内枠を引いた先行馬の中から穴をあけにいく(アスクビクターモア)選択肢もありましたが、内外フラットでは厳しいと判断しました。この日の私の予想は、四強の馬連ボックス。予想は当たりましたが、オッズが割に合わなかったので、馬券の購入は定石通り見送りました。
●『セントライト記念』展望
先に挙げたダービーのトラックバイアスでは「内外フラット」であったことを考慮すると、アスクビクターモアは、世代トップクラスのドウデュースとイクイノックスに外から差されて完敗だったことはそれほど悲観する必要はありません。
また、同じく世代トップクラスのダノンベルーガは、中団で馬群の中から運ぶ苦しい展開であったものの、アスクビクターモアが差されず3着に残した結果は高い評価に値します。以上より、アスクビクターモアは一定水準以上の能力があるということは言えます。
オニャンコポンは、皐月賞で外差し有利な展開、トラックバイアスでしたが、アスクビクターモアに先着を許しました。これについては悲観的に評価すべきで、逆転するには展開、トラックバイアスの助けが必要です。
次に、中山外回り2200mのコースについてですが、内回りよりは一般的に差しが届きやすいと言われています。それ自体は、その通りだと思います。去年は、アサマノイタズラがゴール前強襲で差し切りましたが、例年の秋開催のオールカマー、セントライト記念を振り返ると、総じてトラックバイアスの通り決着しています(特に1着)。逆に、内回り2000mの場合は、外差し有利なトラックバイアス皐月賞が行われる場合には差し決着になっていることが多いです。
したがって、コース形態も大事なのは否定しませんが、まずは定石通り、トラックバイアスに基づいた予想をすべきと考えます。(内が有利か?外が有利か?)
●『ローズステークス』ワンポイント
ローズステークスは、オークス組が2頭と、トライアルにしては、やや寂しいメンバー構成です。人気を背負いそうなのがアートハウス。オークスでは、やや過剰人気を背負ったため、良い馬であることは認めつつも、評価を下げました。
今回はどうでしょうか?オークスでは、G1初挑戦でしたが馬なりで先行し、直線では見せ場を作り、やはり良い馬であることが確認できました。一方で、そうは言っても結果は7着です。先週の紫苑ステークスで勝ったスタニングローズと比べると、見劣りします。先週解説したスタニングローズや、今週のアスクビクターモアについては、春クラシックの結果から一定水準以上の能力があることが分かりましたが、アートハウスの場合は「強いかも。でも、弱いかも」から脱却できていません。したがって、今回は単勝オッズ7倍程度が適正でしょうか?
さらに、この馬が過剰に人気を背負った場合について考えたいと思います。他の馬を軸に据えて馬券を構成すればチャンスがあるかな?とは思います。しかしながら、メンバーを見渡すと、下級条件から上がってきた馬ばかり。これでは、満足な能力比較ができません。下級条件をほとんど見ない私にとって、よく分からない世界で、優位性がまったくありません。控除率の壁がある以上、「荒れるかも」だけを理由に参戦するのは無策以外の何物でもありません。したがって、ローズステークスは見送り濃厚です。
自分にとって条件の悪い(優位性のない)レースに参戦すればするほど、収支は悪化します。他に条件良いレースは幾らでもありますから、今週それがなければ、来週、再来週まで待てば良い。馬券を買ってレースを見る方が楽しいかも知れませんが、場合によっては馬券を買わない覚悟がないと、競馬では勝てないと思っています。競馬は勝つから面白い。だから、楽しくなくても良いと思っています。
以上を踏まえて、当日の枠順、馬場状態、オッズを確認して検討します。
※「AI」のコラムは、「トラックバイアス」のコラムを配信する都合により、配信を延期します。
以上
メルマガ作成者:玉嶋亮
メルマガ発行人:予想屋マスター事務局
【玉嶋亮・著書の紹介】
「競馬の教科書」Amazon ¥1,250
「競馬の教科書 別冊」Amazon ¥200
2022年 上半期 成績
年間予算の52%消化(32R)
的中率53%(17/32)
複勝チャレンジ除く 40%(10/25)
主力券種:馬単、三連単
回収率&主な的中:Twitterプロフィール欄
複勝チャレンジ:7戦7勝
30代半ば/本業:士業/大学から本格的に競馬を始める。予想屋マスターを知り、理論的な競馬の分析に目覚める。リトル予想屋マスターを目指し、予想法を徹底的にコピーした。時間の制約があるため、芝オープンのみにフィールドを限定している。凱旋門賞の単勝万馬券、AJCCの288万円等の的中実績あり。「単勝多点」「変則フォーメーション」等多彩な馬券術に定評がある。「競馬の教科書」は個人出版ながら異例のベストセラー。「別冊」は予想屋マスターとの共著で再びベストセラー。日本一の競馬作家になるのが夢。Twitter(keiba_tamashima)