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こんばんは!玉嶋です。
早速ですが、今週末の『セントウルステークス』予想のポイント、番付について、玉嶋の見解をお届けします。
●セントウルS 番付(あいうえお順)
ーーー
横綱
ーーー
大関
ピクシーナイト
※故障前
ーーー
関脇
該当なし
ーーー
小結+
アグリ
ーーー
小結-
該当なし
ーーー
前頭
上記2頭以外全部
番付の意味
1ランク差
→枠順、トラックバイアス、展開次第では逆転可能。
2ランク差
→枠順、トラックバイアス、展開に恵まれても逆転困難。
秘密兵器
→過去のレースから、番付上位と互角に渡り合える可能性を秘めた馬。
※番付は、過去のレースにおける最大出力を評価する指標であり、この序列の通り決着することを示すものではありません。
●今週の馬券 券種
●紫苑ステークス
能力上位が団子状態。3着以内が椅子取りゲームであることを考えると、複勝チャレンジは使いにくい。いくなら単勝チャレンジ、オーソドックスな馬連フォーメーション、ボックス。(オッズ次第)
●京成杯AH
ソウルラッシュ、インダストリアの二強。一方で、ハンデ戦であることや、紛れの多い中山であることを考慮すると、荒れる可能性も。特に『TB本』『第22章』の『パターンA』『パターンB』になった場合は、そのリスクが増大する。TBを見ない(あるいは、分からない)で馬券を買っている人が圧倒的大多数であるため、そうなった場合は、リスクを看過できないため、思い切って『L-H型』で一発狙いの単系馬券1着付けに寄せるのも一考。
●セントウルステークス
最大出力ではピクシーナイトだが、状態が不明。次点でアグリ。そこまで傑出している訳ではないが、ピクシーナイトを除くと能力最上位。さらに、『パターンA』ないし『パターンB』のTB条件(パターンは、TB本で詳細に解説)が出現した場合は、この馬にとって追い風。そうなった場合は、ピクシーナイトが能力を出し切れるか不透明な状況であり、連軸として据えるのが妥当。オッズが甘ければ複勝チャレンジも視野に入る。一方で、ピクシーナイトがフルパワーで走る可能性もあるため、オッズ次第でピクシーナイト復活に懸けるのも選択肢として残る。さらに、大事なことは『TB本』でも言及した通り、『パターンA』『パターンB』を決め打ちしないこと。フタを開けない限り、馬場状態は分からない。
以上を踏まえて、当日の枠順、馬場状態、オッズを確認して検討します。
●告知●
以前より告知していた『TB本』を、9/2にリリースしました。『競馬の教科書』『第7章 トラックバイアス』に特化した1冊であり、予想屋マスターとの共著で出版しました。いつもお話をしている通り、『トラックバイアス』『馬場読み』は『能力比較』と双璧のファクターであり、ツイート(以下の引用)で示す通り、2列目の『TB本』『MTP本』がそれを担います。
『TB』『能力比較』ツイート▼
https://twitter.com/keiba_tamashima/status/1696129234480373873?s=19
以上、前置きですが、表紙のキャッチコピー「馬場読みを制する者は競馬を制す」の通り、馬場を高い精度で読むことができれば、回収率130%が見えてきます。『TB本』では、事例を羅列するに留まらず、予想屋マスターのサイトで無料公開されている『トラックバイアス表』(以下引用)を効果的に使えるよう、具体的な方法も指南しています。
トラックバイアス表▼
https://www.keibariron.com/trackbias
今週の無料メルマガでは、『TB本』リリースを記念して、『まえがき』『第1章』を全文掲載します。
まえがき
こんにちは。玉嶋亮です。『競馬の教科書』では、『能力比較』『トラックバイアス』が中核を担う二大ファクターであると解説しました。双璧となる2つのファクターを使えば、予想の9割は完成します。ほとんどのレースで、『能力比較』『トラックバイアス』だけを使って予想をすれば、それだけで予想が終わると言っても過言ではありません。『競馬の教科書』を出版した後に、「『能力比較』『トラックバイアス』をもっと詳しく解説して欲しい」というご要望を沢山いただきました。まず、2023年4月にはPaddock Labと共著で『Max Time Point』(以下『MTP本』)を出版しました。これは、『能力比較』をさらに掘り下げた1冊です。MTP本では、馬個体の能力値を『MTP』という数値によって定量化した『能力比較』について解説した上で、『オープンクラスMTP一覧表』も公開し、読者の方々の予想をより効率化、省力化、さらには高回収を実現できるように仕立てました。
今回は、予想屋マスターと共著して『Track Bias』(以下『TB本』)を、馬場読みに特化した1冊として出版することになりました。読者の皆様より「馬場読みって、難しい」「競馬の教科書をもっと詳しく掘り下げて欲しい」等々、貴重なご意見やご要望をいただきました。そこで、予想屋マスターの協力を仰ぎ、蓄積した過去の馬場読みデータ、および当週の予想で使えるリアルタイムの馬場読みを無料公開する運びとなりました。本書の位置付けは、無料公開している馬場読みデータの使い方を解説するとともに、馬場読みの基本的な考え方も解説します。例えば、馬場読みで『内外フラットが。。。』が分かったとして、「じゃあ、どういう馬を狙えば良いの?」等、馬場読みを予想にどう組み込むか?まで踏み込んだ解説をします。
第1章~第20章までは様々なケースを並列で羅列して読者の方々に引き出しを増やしていただき、第21章、第22章では典型的なケーススタディとトラックバイアス表の解説へと展開していきます。イメージ的には、先にテーブルに色々なものを並べて説明した後に、「基本はコレ」に収束させます。本書の最終到達点は、この本を通じて、読者の方々が「今日はこういう馬場だから、最終予想はこうする」「トラックバイアスを分析したけど、週中予想の通りで大丈夫」「トラックバイアス的に、逆転がありそうだから、週中予想を変える必要がある」まで言えるところまで持っていけるように仕立てました。
第1章 馬場読み 大事な理由</p>
馬場が基本ということで、馬場に始まり馬場に終わるのが競馬。後は能力比較との双璧で、馬場読みができないと精度の高い能力比較はできません。馬場読みと能力比較が関わり、その両輪で回していかなければいけない。これは私が競馬予想を始めた駆け出しの時に、予想屋マスターを2010年前後に知って、この2つで回していけば「ああ、これさえやっておけば、競馬で勝てるんだ」ということが分かってここに注力して徹底的にやったということなんですけど、それに対してはどうですか?
基本的には『QA本』でも質問があったんだけど、馬場読みと能力比較でどっちが大事ですかって質問あったじゃないですか?あれを見た時に「いやいやどっちも分かってなきゃ、どっちもできないよって話にしかならなくて」。基本的には、まず能力比較ができているからトラックバイアスが分かる。逆に、トラックバイアスが分かったからこそ、馬場も能力も分かるってことで、鶏が先か卵が先かみたいな感じで。
そうですね。
両方できないといけないわけですよ。どっちが簡単ってわけでもないし、どっちもメチャメチャ難しいから。だからみんな、過去10年の傾向とかが大好きなのは、考えなくても、誰がやっても同じように正しい予想ができた気になれる訳ですよ。例えば、トラックバイアスって、「今日のトラックバイアスはイン有利だよね」とか「内外フラットだよね」とか「外が伸びているね」って、意外とみんな自信を持って言えないと思う。そこがなかなか難しくて、『トラックバイアス』だの『能力分析』だの、みんな偉そうにTwitterとかで言っているけど、本当に理解して実践できている人って、多分全体の5%もいないんじゃない?と思っているんだよね。どうでしょうか?
「全体の5%」というのは、その通りだと思います。実は、『5%』でも言いすぎかも。結構、みんな「それは間違えたらアカン」というところでの間違えが多いし。今回は、トラックバイアスの入門編ということで。。。ファンのために少しハードルを下げてもいいですか?どちらかと言うと、能力比較の方が若干簡単なのかなと思います。というのは、私も全レース下級条件を予想しているわけではないので、馬場を読む時には、午前中から順番に下のクラス(例えば1勝クラス2勝クラス)から進んでいくじゃないですか。進んでいった時に、「じゃあ、このレースは内が有利なの?外が有利なの?内外フラットなの?」を見る時に、まず人気順を見るんですよ。下級条件は自分で予想していないから、それしかできないと言う意味で。
あ、でもね。これは僕らがいつも言っているように、競馬が上手くなるためにまずは予想をしましょうねっていうのが基本にあって。予想をした時に、「期待値が高い馬を見つけるためにオッズにぶつける」訳じゃないですか?それで、意外と世論との乖離がある場合、つまり「オッズと能力序列の間に乖離がある」ってこと自体が実はあまりないよねってこと。玉嶋さんが言うように、『人気順≒能力順』というのは、実力が分からない中で言うと、ほとんどの場面で概ね正しい判断です。だから、人気薄の馬が上位に来ている場合に「どういうコース取りか?」逆に「人気馬が飛んだ時のコース取りがどういうコース取りか?」を見るだけで、トラックバイアスの判断自体は大分上手くなると思います。
それについては、『競馬の教科書』でも言及しています。例えば単勝30倍以上付いている逃げ馬が、その日のレースで2〜3回連続で逃げ残って好走したら、明らかに「今日は内有利だな」と判断できます。
そう。だから、「人気薄の馬が内側を通って総じて好走している時は、やっぱりどう見ても内有利だよね」って話で。2023/7/1(土)中京も、やっぱり人気薄が好走しているのは、総じて内側で脚を溜めていた馬なんですよ。もう1つは、ほとんどの人がトラックバイアスの話をする時に、意外とみんなトラックバイアスを正しく分析できていないなというのがあって。何を言いたいかというと、トラックバイアスでどこを通ったかって聞くと、みんな直線ばかりのことを言うのよ。
あー、それはそうかも。分かります。トラックバイアスで大事なのは、直線ではなく3,4コーナーの攻防です。
トラックバイアスの分析で大事なのは直線ではなく、コーナーワークなんですよ。特に、一番のポイントは3,4コーナー。でも、道中ずっと内を回っていて直線だけ外に出して追い込んでくると、外も届いているんじゃないか?というハナシをほとんどの人がしたがるんだけど、「いやいや、コーナーで内側を通って直線で外に出しただけだよね?」っていうところが意外とみんな分かっていなくて。直線だけ外に出した場合と、コーナーワークで終始外を回っていた場合では距離のロスが全く違うって考えれば当然なんですが。あとは意外と多くの競馬ファンは、レースビデオを最初から見ていなくて直線だけ見しか見ていないというのもありますが。JRAの参照レースの動画が直線だけなので仕方ないところもありますが。あとは、トラックバイアスをマスターするポイントとしては、全馬の能力分析は難しいというハナシがあります。アマチュアの方々が朝の1Rからの能力分析をすることはほぼ不可能だし、プロの予想屋でちゃんと予想に時間を掛けている僕やPaddock Labくらいしかできないよね?ということ。自分で予想すると、大体は人気馬が強いということが分かりますが、一般の競馬ファンはそこまでできません。そこで、トラックバイアスを理解する上で見るポイントは2つあります。1つ目は、ある程度人気は実力の1つのバロメーターでもあるから、人気のない馬がどこのコース取りを通ったか?人気馬が飛んだ時にどういうコース取りだったか?を判断基準としてトラックバイアスを判断しようねって、ということ。2つ目が、コース取りで最も大事なポイントは、実はコーナーワークだってことをみんな認識した方が良いよね、ということですね。
そうそう。そういう意味でいうと、去年のヴェラアズールが勝った京都大賞典。あの日って、朝からずっと雨が降っていて。馬場読みが難しい日でしたよね。
難しい日でしたね。開幕週だから例年はイン有利になりやすいのですが、雨で状況が一変しました。
難しかったんだけど、ヒントはあって。当日の9Rでしたけど、3,4コーナーで内よりも外にバーっと馬群が張ってきていたんですよね。それでを見て、「今日はちょっと外かな?」っていうのがあって、あの日は過去のレース結果から普通に能力比較をして予想すれば、ボッケリーニが最上位だったんですけどね。でも、「今日はちょっと外かな?」だと、ボッケリーニの優位性が怪しくなってきます。
そう。ボッケリーニが実績も断然だしね。でも、当日のトラックバイアスを見ると、盤石という感じでもないかな?ということを言えるのが馬場読み。
ただ、それだけでヴェラアズールが優位と見るのもちょっと違って。恵まれたとしても、当時は条件戦を勝っただけだから、そもそも能力的に通用するの?という見方もできましたから。こういう時は、最終予想の段階でちょっと困ります。難しいし、大して妙味もないから。「それなら、見送っとけよ」というハナシなんですけどね。この状況で、ヴェラアズールが単勝10倍あるいはそれ以上付くなら、全然通用しないリスクを積極的に取って、「通用するかも」の可能性に全振りするのはアリです。通用するかもしれないし、そればかりは、走ってみないと分からないから。
そうそう。当時のヴェラアズールは、条件戦上がりだったから、どちらかというと格下の馬でしたね。
単勝7倍だったんですよね。単勝7倍ってどうなの?って。
めっちゃ売れていましたよね。今となれば、後のジャパンカップを勝つような馬が単勝7倍で売れすぎと思っている僕らが見る目ないという話になるんだけど。過去のレースを見てボッケリーニ相手に悠々差し切る等、ジャパンカップを勝つところまでは予見できないよ。まあ、結果だけ見るとジャパンカップまで強かったし、もうひとつ言うと、あの勝ちっぷりは本当に強かったよね。
だから、そういう意味で言うと、京都大賞典とジャパンカップではヴェラアズールが最大出力を更新したっていうのがあるんですけれどね。MTPも、京都大賞典とジャパンカップで、かなり上がったんじゃないですかね?70を一気に突破して、ジャパンカップで70台後半?最大出力の更新に期待するのはできますよ?でもね、それって、もはや予想でもなんでもないです。最大出力の更新を期待したところで、頭打ちになる馬の方が圧倒的に多い訳で。確率論です。
京都大賞典は基本的には開幕週に行われるから、大体は内側が有利になりやすい日なのよね、基本は。10年やっていると7年か8年は内側が有利なはずなのよ、過去のトラックバイアスをちゃんと振り返ると。多分、7年か8年は内側有利なはずだけど、雨が降ったことによって内外フラットになった。まあ、すごい外有利だったかというとちょっと分からないけど、少なくとも開幕週らしい内有利よりは、内外フラットに寄っていたは思います。
そうそう。例えば2019年の京都大賞典。この時は京都開催だったんですけど、やや内有利なトラックバイアスだったんですよね。それに加えて、人気を背負っていたエタリオウが追い込み一手の馬で、前目の馬が総じて人気がない状況でした。この時は、「前目から運んで、そのまま前残りで穴があく可能性があるぞ」と思って、単勝多点を仕掛けました。その内の1頭がドレッドノータス(単勝90.7倍1着)。2着も逃げたダンビュライト(単勝17.4倍)だったので、典型的な前残りの競馬だったと言えます。だから、近年は馬場管理技術が飛躍的に向上して、外有利のトラックバイアスって、あまり条件として出現しません。レアケースとして、福島の開催末期や、去年のキーンランドカップとか、みんな外をバーっと張ってくるんだけど、外に入りすぎてトウシンマカオが押し出されてしまって全然来なくて、後方がモタついている間にヴェントヴォーチェが馬場の三分どころからドーンと抜けてきて、一緒に内から伸びてきたウインマーベルが2着みたいなことは起きますね。あとは、前目から終始ラチ沿いで3着だったヴァトレニもいたし。
騎手心理が外へ向いて、みんなが内側を開けたから内側を通った馬が好走したみたいな日ですね。今日(2023年7月2日(日):ラジオNIKKEI賞、巴賞)も実は、ライブ配信でトラックバイアスについて意見ありますか?みたいな話になったので表を見返してみたら、意外と外有利の日って、年に10日もなかったんですよ。これはもうめちゃめちゃ簡単で、外側が有利にならない理由は、3つあります。1つ目は先程玉嶋さんが言っていたように、馬場の管理技術が飛躍的に上がっていて、なかなか芝でいうと外が有利になりづらいよね。そもそも競馬ってコーナーがあるから、原理原則として外が有利な訳がない。前提条件としてコーナーがあるんだから。内も外も馬場状態が良好なら、外が有利になる訳ないよね、というのが馬場の考え方のスタート地点。2つ目は、コース変更があるから、外が有利になることは少ないよねっていうこと。3つ目は、今の騎手って、芝のレースだと特に、内側がちょっとでも荒れ始めるとみんな内側を避けちゃうから。そうなると内側を開けることによって、後続はさらに外を回らないといけないから届かなくて、本当の意味で外が有利にならないんだよね。今挙げた3つのポイントを踏まえると、なかなか外有利のトラックバイアスにならないよねって感じです。芝の場合だと、外が有利ってジョッキーが気付きだしたら、みんな内側空けるみたいな話になるから、本当に外が有利にならない。
そういう意味で言うと、騎手もやっぱり負けた時の言い訳をしないといけないから、外が有利になり始めている状況下で、みんなが外へ外へ張り出していっているのに、なかなか内に自分だけ突っ込むのは難しいですよね。
そう、内側を通る勇気がないよね。馬主さんや調教師から、「何故外が有利なのが分かっている状況で、内に突っ込んだ?」って問われたら、何も言い返せないし。責任問題にも発展しますから。そうなったら、誰も騎手を擁護できなくもなるからね。
リスクを承知で内に突っ込んで、それで勝てばいいですよ。勝てばいいんだけど、もし万が一負けたら「何故内側を通ったの?」って、調教師や馬主から問われた時に、マスターが言う通り、騎手が申し開きできないじゃないですか?彼らも仕事で馬に乗っているから、負けるにしても負け方があるというか。「やることを全てやって負けてしまいました」だったら、「そっか、仕方ないよな。じゃあ、次もよろしくな」と納得してもらえるでしょうが、騎手全員が外へ張っていっているのに、自分だけ内に突っ込んで惨敗した日には、「何してんねん。代わりなんかいくらでもいるし、お前なんかもう乗らんでええわ」って言われるのは、目に見えますから。実名は出せませんけど、10回に1回のファインプレー、単勝で穴をあける騎手は、リーディング上位にいません。リーディング上位の騎手は、総じて無難な騎乗に徹しています。
そう言えば、札幌記念レース後に川田騎手のコラムを見つけました。読者の方々にとって、凄く勉強になると思うので、貼っておきます。騎手にとって、競馬って減点方式なんです。馬主さんや調教師との信頼関係が揺らいだら、二度とチャンスが巡って来なくなるリスクが極めて高いです。だからこそ、騎手がリスクを取ってチャレンジすることは、我々予想する側が過剰に期待しちゃいけないんです。
2023年札幌記念 プログノーシス 川田騎手コラム▼
https://news.sp.netkeiba.com/?pid=column_view&wid=CH124
特に馬主さんって、事業で成功されている方ばかりですから、理由や意味もなく、勝手な判断で騎手がスタンドプレーに走るのを嫌うじゃないですか?高いお金払って競走馬を買っているのに。過去にはいましたよ?F騎手やT騎手。G1でも結果を残しましたけど、あまりにスタンドプレーが多すぎると、馬主さんはおろか、調教師や厩務員は面白いはずがないじゃないですか?必死に何ヶ月も掛けて仕上げてG1に臨んでいるのに、スタンドプレーの数分間で数カ月間の努力がブチ壊されますからね。総スカンを食らって干されて当然です。
そういう意味だと、あれかな?新潟の直線競馬で内枠の馬でもみんな外に向かって走っていたのが、2022年のアイビスサマーダッシュで1枠1番を引いたバカラクイーンが内ラチ沿いを走って3着に来た時から、あれからちょっとブームが始まったんだよ。
ありましたね。ああいうのって、馬主と調教師の間に強固な信頼関係があって、周到な根回しをしないと、なかなか難しいと思います。だって、普通はやらないことだから、そこに信頼関係がなければ、馬主の立場なら「ミスったら、どう責任取ってくれるの?」となるはずです。根回しをした上で、馬主、調教師、騎手の合意がないと、騎手の一存では、自分だけ内にいくのは難しいんじゃないですかね?騎手って、個人事業主ですけど、良い馬を回してもらってナンボの商売ですから。騎手に限らず、これを読まれている方々がやられているようなどんな仕事でも同じだと思いますけど。
結局、みんなリスクが取れないのよ。みんなが同じ乗り方をしている時に、一人で内側を突くって勇気があることが出来なくて、みんな外ラチに向かうのが正しいよねって話を、ずっと直線競馬ができてからもう10何年みんなでやっていたんだけど、あの時のアイビスサマーダッシュって1枠1番のバカラクイーンが内側通って3着に来たのを見て「内側が意外と行ける」みたいな話。意外とみんな人と違うことが出来ないんだと思ったよねえ。
あの時は、菅原騎手でしたっけ?あのレース以降は、バカラクイーンの前例ができましたから、千直のレースでも内枠を引いた馬で徒党を組んで、外枠とは別のレースを展開することが増えてきたじゃないですか?これって、バカラクイーン陣営の三島牧場-武井調教師-菅原騎手のラインが前例を作ったことで、「千直ですけど、内に突っ込んでも良いですか?」の機運が生まれたのだと推察します。「バカラクイーンの前例があるから、ウチもやっても良いですか?」と言えば、角は立たないですし。でも、説得するのに労力が掛かるし、普通はやらないことだから、やっぱり前例踏襲主義が基本ですよ。理由もないのに、変える意味がないですから。
話題を変えましょう。トラックバイアスについて言うと、ちょっと1つだけミスリードだったなと思っているのがあって、トラックバイアスの表自体は合っているんだけど、『内前有利』って表現が良くないなと思って。内側有利か外側有利だけで良いのよ。ただ、内有利だと結果的に前が有利になっている可能性が高いから、分かりやすく内前有利って言っていたんだけど。ただ、それもハイペースになれば中団よりは後方の内側が有利なんですよ。ただ、ほとんどの場合は、超ハイペースであることはそんなに競馬ではないから、内側が有利な時って、インのポジションを取れる馬は、ほとんどのケースで逃げか先行なのよ。だから、『内前有利』って今まで気軽にツイートしてきたけど、今日(2023/07/02)のライブ配信の質問を見ていて、確かに『内前有利』という言い方は、トラックバイアスを厳密に言うと正しくないな、というのをちょっと思って。どう思いますか?
言われてみれば、確かにそうかも知れません。
だから、1つは内有利、外有利、内外フラットはいいんだけど、例えば、内有利だからって、絶対前有利とは限らない。ただ、内有利の場合は、ほとんどのシーンで内前有利ですよねっていうのが正しい論理展開なのよ。ただ、内前有利って今まで言っていたから、もう何かインが有利の時はどんなにハイペースでも展開関係なく前有利だよねって思わせたのはちょっとミスリードだったかなとは思いますね。
確かにそうですね、分かります。では、今後は『内前有利』の表記を『内有利』に改めましょうか?
そうしましょう。
ただ、一方で内有利と解説したところで、後方から来る馬って内に突っ込むか?外回すか?っていうのは、分からないですよね?そういう意味で言うと、前に行ける馬はほぼ例外なく内の進路を選べるから、有利になるということは言えますよね?後方から運ぶ馬については、内が空いていればラッキーですけど、内が有利なことが分かりきっている時に、前にいる馬は内を開けないですからね。中団より前目から運ぶ馬は、手応えが良ければラチ沿いに行ければ馬場が良い上にラチを真っ直ぐ走るための定規にもできますからね。そうなった場合には、やはり後方から運ぶ馬は、『椅子取りゲーム』的な発想で、外の進路を選ばざるを得ないシーンがほとんどのはずで。
そう。これは分からないです。これは内側有利の時ってポイントが1つあって、これも確率論なんだけど、内枠を引いている馬の方が、内目のポジションを取れる確率は高いよねって言う。
その通りですね。次に、外有利の場合を考えてみましょうか?例えば、外が有利な時に後ろから行く馬の場合、気にするのは枠順です。内枠を引いた場合、団子隊列で中団後方あたりから運ぶ馬だと、もしかすると閉じ込められてヤバいんじゃないか?っていう可能性は考えますね。だから、この場合なら、中団後方から運ぶ馬で同程度の能力の馬が2頭いるのならば、外枠を引いた馬を優位に取ります。勝負どころに差し掛かる前にスムーズに外に出せるし、内にいる馬にフタをしながら3,4コーナーで押し上げていくと考えるのが自然なので。スプリントやマイルのワンターンの時は、特に気にしますね。外へ出すタイミング自体がないですから。コントレイルが皐月賞を勝った時は、団子隊列が容易に想像できましたから、1枠1番を引いて、「さすがにキツイんじゃないか?」と思いましたが、あれを後方まで下げてから外へ出して、前目にいたサリオスを悠々と差し切るのは相当強いです。同じ1枠1番でも、ソールオリエンスが勝った縦長隊列の時とは、厳しさが全然違いましたから。
あぁ。外有利の時はね、僕ずっと予想して思うのは、外枠が有利なのは1200mとかワンターンの時は、外出す暇ないから意外と外枠有利なんだけど、1周回る時は1回下げるから内枠でも外出せるんだよね。だから、そこは何とも言えなくて。
分かります。スプリントで外有利の場合に、後方から運ぶ馬が内枠を引いたら、スムーズな形で外へ出すのって、まあまあハードルが高いですから。一方で、福島の中距離だと、マスターが仰っている通り、縦長になるケースの方が多いから、一旦下げてから外へ持ち出すチャンスを見計らうチャンスはありますからね。あとは、縦長を想定できる場合なら、皐月賞ソールオリエンスが1枠1番を引いても、全然不利ではないですからね。あの時って、「ソールオリエンスが1枠1番を引いて絶望的」みたいな見解がTwitterで溢れ返ったんですけど、グラニットがハイペースで引っ張る流れが想定できていれば、「いやいや、縦長になるなら、コントレイルの時とは状況が違って、1枠でもあまり関係ないでしょう?」ということは言えましたからね。
その通り。1200mとかワンターンの競馬の時、内枠の馬が外に出すのは結構ハードル高くて。そうすると、外有利の時は7枠8枠の馬がやっぱ有利になるんだけど。ただ、なかなか難しくて、福島とかで内側荒れ始めると内枠の馬が外行くから、外がさらに外へ外へと押し出されるから、意外とそうでもなくなることもあって。外有利と言えば、さっき挙げた2022年のキーンランドカップとかもそうで、外有利と騎手が思いすぎるとみんなが内を空けすぎて結果として外を回った馬が伸びない。そこはね。なかなか一概に最近の競馬では言えないなと思っていて。
あの時は、外枠の憂き目を受けたのはトウシンマカオですね?ケースバイケースかな。。。それにしても、2022年のキーンランドカップは難しかったとは思います。
そう、外有利はね、結構難しいなと思っていて。
極端に外有利が、予想が最も難しいんじゃないですか?外を回した馬がどこまで恵まれるか?外を回しすぎて競馬にならないか?って、読みづらいところもありますから。
僕も、トラックバイアスの表を今回整理していて、「内側を開けすぎて外が来ないパターン」のほとんどの場合って、土曜日に外差しが来すぎて翌日の日曜日にみんなが内側を空けすぎ外が来なくなるパターン。だから、土日で競馬が一変するのよ。だからそこが騎手心理というか、みんながそう思うとそうなっちゃうよねっていうことを考えると、外有利は意外と2日連続では続かない。だから難しい。再現性に乏しいというか。。。
分かります。
繰り返しになるけど、土曜日に外有利の時って、意外と日曜日は外が来ない。騎手がみんな内を開けすぎてね。トラックバイアスの読みは難しいよねえ。
その通りだと思います。土曜日の競馬が終わった時点で、馬主、調教師、騎手の間で「どうしましょうか?」の打合せをしているはずで、土曜日の段階で外が有利なら、「外を回しましょうか?」と、気の利く騎手なら、馬主さんや調教師に根回しをするはずですから。そうなった場合に、騎手の立場なら自分勝手に内を通したら責任問題に発展しますから、多少極端であっても、パフォーマンスの意味でも外を通したがるのは自然です。勝手な判断で内を通して惨敗でもした日には、「お前、何してんねん」と関係者から言われたら、申し開きできないですからね。関係者から全幅の信頼を寄せられているルメール騎手や川田騎手ならハナシは別ですよ笑。だから、2022年のキーンランドカップでヴェントヴォーチェが、後ろが外へ外へ張り出してダチョウ倶楽部みたいになっている状況で、スパッと抜けてきたのはそういうことだったと思います。では、冒頭はこれぐらいにして進めましょうか。
ーーー以上、第1章ーーー
・全22章構成(6万字)
・TBパターンを5つに分類
・リアルタイムTB表との連携
Track Bias 9/2 新発売▼
メルマガ作成者:
玉嶋亮
メルマガ発行人:
予想屋マスター事務局
予想屋マスター事務局スタッフ片山・麻生が担当しております。 ご意見、ご要望などいただけたら嬉しいです。